A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 3
CHAPTER.1
アニプレックスが求めている人材
― 「アニメビジネスの最前線と課題」というテーマの講義で、学生は最後まで粘り強く質問をしていました。
夏目公一朗さん(以下夏目と敬称略):やはり東京工科大学メディア学部は、アニメ業界への就職を目的としている学生も多く、毎年のことながら熱心ですね。講義を終えてからも質問に来る学生がいますし、積極的ですね。
― 2年前、夏目先生にインタビューさせていただいたとき、「アニメ業界に入る為に特別なことはいらない」とお話しいただきました。しかし、この2年間でアニメ業界はライトノベル等の原作ものが増え、ライブの回数も増え、より盛り上がっていると思います。アニメ業界に入りたい学生は競争率が上がっているのではないでしょうか?
夏目:競争率が上がっているかどうかは正確な統計を取っていませんが、昔よりも確かに応募してくる方は増えていると思います。これだけアニメに慣れ親しんでいる若い方が増えて、そういう意味では競争率はちょっと上がっているかもしれないですね。
― そのようななかで、アニプレックス傘下のA−1Picturesスタジオの採用状況はいかがですか?
夏目:A−1は、2014年の秋に中途で10人、2015年の新卒で15人採用しています。それはスタジオを広げるためでもあり、一人一人の仕事の負荷を減らすためにも、稼ぐ領域を増やそうとしているからです。
― 稼ぐ領域と言いますと?
夏目:例えばコミケには毎年50万人もの参加者がいるわけです。これはモノを買いに来る物販イベントの最たるもので、アニプレックスもブースを出しています。そこではスタジオが作った作品の設計資料、いわゆる原画を、人気作品だと5千部くらいで本にしますが、とても売れるんです。それはスタジオの収入になります。ですから、かつては少なかった編集制作のスタッフを増やすことで、稼ぐ領域も広くなり、収益が上がることで、一人一人の仕事の負荷を減らすことになっていきます。
― 今はどんな人材を求めておられますか?
夏目:一つは、心身のタフな人ですね。まずこの仕事はハードワークですから。それと、どんな仕事も同じかもしれませんが、単にお金を稼ぐ為だけではなく、情熱を持ってその仕事で身を立てていこうと思う人に来て欲しいですね。
面接で「将来は何になりたいのか?」と質問したとき、「自分はプロデューサーになりたい」と言った学生がいましたが、そういう目的を持って来て欲しいです。最近はアニメ好きということで何となく入ってくる学生もいますが、やはり目的が明確にあれば踏ん張れます。また、高みを目指すために自分に足りないものをどう補うか、人からどう知識を吸収するか、そういった上昇するための努力が必要なわけで、情熱と上昇志向を持って来て欲しいですね。
― 学生のうちにしておいた方がいいことは何ですか?
夏目:スタジオ系のプロデューサーでもアニプレックスみたいなパッケージ系のスタジオでも、オリジナルを作るときに脚本家とのディスカッションがあります。そのときは監督も決まっていて、監督と脚本家とプロデューサーのディスカッションで原案ができてくるわけです。つまりプロデューサーは、そもそも脚本を読みこなす力がないと駄目です。だから、とにかくいろんな本を読むべきだし、漫画だけじゃなくライトノベルでも、純文学でもいいし。読解力や文章力は、人とコミュニケートして何かを伝える上で凄く重要ですし、雑誌でも新聞でもとにかく文字を読むことが大事だと思います。
それとコミュニケーション力。上にいくためにはとりわけ必要になると思います。
― 日本のアニメの世界進出は、年々エリアも広がり、参加者も増えています。それらに対応するために、学生が注意すべきことはありますか?
夏目:世界に進出する上で特に必要なことはないと思いますが、ただ英語は話せるといいですね。それとインターネットからオンタイムで情報は入ってきますが、国内の現場(作品イベント、音楽ライブ、アニソンフェス等)の生の雰囲気は体験して欲しいですね。最近の現場は、クリエイターの方もゲストで招かれるんです。JAPAN EXPOには4日間で20万人が来場しましたが、あの場所では監督やキャラクターデザイナーやシナリオライター、プロデューサーたちがステージでトークショーを行ないます。そこで最初と最後の挨拶を英語でするとウケがいいんです。クレバーなアーティストは、JAPAN EXPOでは英語やフランス語で挨拶します。そうすると会場が盛り上がる。こういったことは現場でしか掴めないですよね。
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