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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 3

高野寛さん
Interviewee

REC.009 高野寛さん

ミュージシャン/音楽プロデューサー

プロフィールの詳細


CHAPTER.2
今、学生に教える立場として

― 高野先生は、京都精華大学のポピュラーカルチャー学部音楽コースで学生たちに音楽を教えていますが、講義はどんな内容なのですか?

高野:僕の講座は、ミュージシャン志望や音楽に携わる仕事がしたい学生、何となく音楽に関係していきたい学生たちで、動機は様々ですが共通点は音楽が好きであること。そこで約20名に、ソング・ライティング(作詞・作曲)を教えています。音楽、しかもポピュラーミュージックに特化した大学の学部は日本で初めてらしいんです。

― 実習中心なのですか?

高野:ほとんどそうですね。まず基本中の基本だけを教え、例えば、3コードの聴き取りを練習して、イメージを形にするために参考になるようなことを話し、その後はじゃあ作ろうっていう、そういうことから始めていきます。これで学生たちは思い思いのスタイルで何となく作り始めるようになり、全員が完全に1曲が仕上げられるようになるまでには2ヶ月くらい必要ですが、これで何とか形になっていきますね。

― やはり教える立場として、高野先生の26年という経験は大きいですよね。

高野:そうですね。元々ちょっと老成していると若いときから言われていて、逆に今ぐらいの年齢になって自分のテンションと実年齢が一致したような気もします。僕は元々ライブより作品を録音することが好きでしたが、幸か不幸か自分のデビューの時には生粋のポップ・シンガーとして認知されたので、初期の頃はライブで上手く自分の音楽を表現できないことにすごく葛藤がありました。そこで、例えば今日の講義みたいにギター1本でやれるような力量が備わっていれば、その状況を変えていけたんだろうけれども、ライブにおける基礎体力がまったくない時期でした。ストリートとかライブハウスで歌い続けてデビューしたというシンガーじゃなかったので、ライブの持っていき方みたいなものはデビューしてから現場で体験していったところがありますね。やはり現場の体験で得ることが大きいですし、学生たちにもそういった目線で伝えていきたいですよね。

― 学生たちは作詞・作曲の課題をどのような形で提出するのですか?

高野:もちろんそんなにたくさんの曲はできないですけど、フルコーラスの作品は年間3〜4曲くらいかな。例えばストリートで弾き語りしているシンガーの学生もいて、その場合はざっくりとレコーダーでライブ録音をしてそれを提出してもらいます。ライブをしていない学生は、バンドと打ち込みとボカロ(VOCALOID)ですね。楽器を使えない学生もいますが、無自覚なままに結構おもしろい作品を作ってきます。「これにはこういったコード進行がある」ということを教えるだけだとただの常識に染まっていくので、知識を詰め込むよりは、学生たちが好きなようにやって、自分なりのやり方を探すことが、僕としては大事だと思っています。僕の立場はプロデュースの作業に近くて、コード譜を読めると読めない学生、楽器を弾く学生と弾けない学生、それぞれが必要なことが違うので、全体で同じことは言えないんですよ。あとは、誰でもできないときはため息つきながらやっていますが、それを乗り越えて作品ができたときには、すごく達成感を持てると思う。最後に成果発表を1枚のCDにまとめます。

― 教える立場になられてから、これまで何か変化がありましたか?

高野:学生たちに教えるようになってから、いろいろなバンドの音楽を聴くようになりました。こういった機会がなかったら興味を持たなかったと思うんですけど、僕は最近tofubeatsとか、ゲスの極み乙女。が好きです。それから、以前はちょっと自分のなかにシニカルな目線があって、無意識にここがちょっと甘いなとか、とにかくあら探しをしながら人の音楽を聴くことが多かった(笑)。だけど、学生たちに教えるようになって、彼らのいいところを探すことにしたら、自分自身のモノの見方がポジティブになりましたね。学生のなかには邦楽しか聴かないで育った人が結構いますが、洋楽で育った僕としては、そんな最近の日本の音楽シーンには否定的でした。でも今はそんな先入観も捨てて音楽を聴くようになりましたね。

― 本日はありがとうございました。

(次回は、オリコン・エンタテインメント株式会社の垂石克哉さんです)

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