A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 4
CHAPTER.2
『クールジャパン』戦略
― さて、講義では「クールジャパン(*1)」戦略の狙いの施策を説明していただきました。学生たちはより問題意識を高めることができたと思います。
(*1アニメ、ドラマ、音楽等のコンテンツや「衣」「食」「住」をはじめ、日本の文化やライフスタイルの魅力を付加価値に変え、新興国等の旺盛な海外需要を獲得し、日本の経済成長・企業の活躍・雇用創成につなげること)
伊藤:今日話したのは、いいものをつくれば必ず売れるわけではなく、いいものをつくるのは前提条件で、売れるためには戦略が必要ということです。海外で日本ファンを増やすために、まず日本の魅力を効果的に発信して日本のブームを創出し、現地で稼ぐためのプラットフォームを構築しなければなりません。そして、観光政策などと連携しつつ、日本に関心を持った外国客を実際に日本に呼び込むことで消費を促す。そのため、まずは商品を知ってもらうことが重要です。手法は、マーケティング、口コミ等様々ですが、全く声もかけずにポンと置くだけでは、良いものでも売れません。そのためにも先程話しました説得力のある表現力が販売戦略ではとても重要な役割を担います。
― やはり、日本のアニメ・漫画は世界的にも凄いですよね。
伊藤:例えば、映画「Stand by me ドラえもん」が中国で100億円を超える大ヒットとなったり、「ちびまる子ちゃん」の海外放映さをきっかけに、静岡県清水市の「ちびまる子ちゃんランド」に外国の観光客が大勢詰めかけるなど、アニメは、有望な分野と考えています。
― クールジャパン機構は海外に向けて日本のマンガ・アニメ等のポップカルチャーの魅力を発信するメディア・EC(電子商取引)事業に投資なさっていますが、こういった事業に社会に出た学生が関わるためには、どうしたらいいでしょうか?
伊藤:例えば海外に向けて企画やコンテンツを売り込むとき、日本のコンテンツの海外展開で地域経済を活性化するための「J-LOP+」(ジェイロッププラス)を利用していただけるとやりやすいと思います。
J-LOP+(地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業費補助金):
https://www.vipo.or.jp/project/j-lop-plus/
― 本日の講義でもお話されましたが、J-LOP+ではこの2年間で約3800件、先程例に出たアニメ「ちびまる子ちゃん」や電子コミック「ドラえもん」の字幕・吹き替え等の現地化(ローカライズ)を支援していますね。
伊藤:学生にとって、個人では難しいので企業に就職して海外に出て行きたいというとき「J-LOP+」は非常に有効なものになると思います。また、海外見本市で出展したいという場合や国内の展示会に参加するという時にも活用できます。
― クールジャパン機構ではハリウッドなどが培ってきた国際的な手法を学ぶことができる海外フィルムスクールへの留学を支援するなど、プロデューサーの人材育成も行なっていますが、こちらはいかがですか?
伊藤:「国際コンテンツビジネスプロデューサー*2」の育成を目指し、海外留学支援制度及び海外企業実務研修制度(インターン)などを実施しています。平成22年に開始以降、26年度末まで8名の留学を支援し、一人あたり最大3万ドル(年間)の助成など総合的なサポートを行なっています。また、海外企業実務研修制度についてはこれまで2名の実務研修実施を支援し、ハリウッドをはじめとする海外の現場などを経験してもらっています。
(*2コンテンツ産業の国際展開及び国際共同制作を推進するため、資金調達・契約・マーケティングといったプロデュース業務を担うプロデューサー)
国際人材育成事業:http://producerhub.go.jp/
― 今後コンテンツビジネスで仕事をする若者たちは、国際共同製作を経験してゆくのでしょうね。
伊藤:クールジャパンは、日本のいいモノを発信して、それを元に海外でいろいろなビジネスが活性化していき、日本に還元されるというシステムです。そのグローバルの流れのなかで、皆さんにはこれからの活躍を期待したいです。
― お勧めの本があれば教えてください。
伊藤:コンテンツをビジネス面から見るという点で多少古いですが「あの映画は何人みれば儲かるのか?」(松尾里央著、TAC出版)が読みやすいと思います。また、コンテンツビジネスの基礎知識である著作権法(文化庁)や意匠法(特許庁)については、学んでいただきたいと思います。
著作権法(文化庁):http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/
意匠法(特許庁):https://www.jpo.go.jp/seido/isho/index.html
「あの映画は何人みれば儲かるのか?」(松尾里央著、TAC出版)
― 本日は誠にありがとうございました。
(次回はJ-WAVE編成局局次長兼編成部長の松尾健司さんです。)
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