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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 6

田邊浩介さん
Interviewee

REC.005 田邊浩介さん

(株)NHKエンタープライズ 事業開発センター イベント・映像展開 エグゼクティブ・プロデューサー

プロフィールの詳細


CHAPTER.4
絵コンテからプレビズ、そしてMAへ

― 8K:VRの制作フローで、田邊先生が絵コンテをつくるときのお話しがありましたが、どんなことからスタートするのですか?

田邊:絵コンテをつくるときは、ずっと曲を聴いていました。サカナクションの「Aoi」も、サザンオールスターズの「東京VICTORY」も、身体に曲をインストールするというか、一つ一つの音が自分のものになるまで、ループでその曲だけを聴き続けます。何度も繰り返して聴きながら、映像のイメージを少しずつ固めていく感じです。歌詞にインスパイアされることもあります。

― 絵コンテは仕事場で描かれるのですか?

田邊:基本的には、家で描いていました。手描きではなくてMacでどんどんつくっていて、「Aoi -碧- サカナクション」のときは、数日間ずっと「Aoi」を聴き続け、イメージが固まり、構成が決まったら、まず文字で書いて、次にPhotoshopでイメージをコラージュして、ビジュアル化していきます。実際の絵コンテを仕上げる作業は2日間です。

― 講義のスライドで拝見しましたが、凄くきれいなコンテですよね。

田邊:絵コンテはいわば設計図なので、スタッフとイメージがすぐに共有できるように分かりやすくつくっています。CGチームが絵コンテをベースに、プレビズ(Previsualization:CGによるシミュレーション映像)を2週間ぐらい掛けて作成しました。

― プレビズで一番注意されることはなんですか?

田邊:プレビズは大事なプロセスです。映像で確認しながら、それぞれのカットの尺やタイミングを決めていきます。プレビズで確定した構成をブラッシュアップしていくので、3D映像の場合には、立体感の設計も含めて、このプロセスで映像の最終型をフィックスします。

― 次はどんな作業になりますか?

田邊:絵コンテのビジュアルを入れていた部分が、実写の撮影素材に差し替わり、CGもラフなモデリングだったものが、少しずつ最終的なイメージに更新されていきます。プレビズを少しずつアップデートしながら、映像が最終型に近づいていきます。

― 実写撮影なども同時に進んでいるんですよね。

田邊:「Aoi -碧- サカナクション」のタイムスケジュールでいうと、2016年のお盆休みに絵コンテを描いてました。サカナクションの事務所にOKをもらって、絵コンテがフィックスしたのが8月末。9月からCGの制作が始まって、10月10日にスタジオを押さえて、サカナクションのメンバーを3D撮影してます。

― サカナクションは大阪城ホールのライブも撮影したそうですね?

田邊:10月中旬の大阪城ホール公演で合成用の観客の実写素材を3D撮影しています。本番中の一発撮りです。ステージの上に上がるのはカメラマンだけで、僕はステージ裏で成功するように祈りながらモニターをチェックしていました。タイムラプス以外の3D撮影はこれで終了。あとはスタジオ撮影素材やCGとの合成プロセスが待っています。グリーンバック背景でのクロマキー(画面合成技法)合成なんですが、8Kだと細かい抜けまで見え過ぎてしまって、予想以上に時間がかかりました。合成やオンライン編集を10月の後半に詰めてやっていた感じですね。

― 最初のコンテにはスケジュールも書いてあるんですか?

田邊:作業スケジュールまた別に組んでいます。凄くタイトなスケジュールでしたが、サカナクションのスケジュールの事情で、撮影はそのタイミングでしかできないとわかっていたので、事前に進められるCGは前倒しで進めて、10月中旬までに素材をほぼ全て仕上げてもらいました。10月後半の2週間で映像を仕上げて、11月に入ったら22.2chサラウンドのMA(マルチオーディオ)ミックスの作業がスタートしました。

― 22.2chはいかがですか?

田邊:22.2chをフルに駆使したサラウンドをずっと聴いていると、耳が慣れてしまうので、メリハリを付けることを意識してもらいました。その他、コーラス部分では音に包まれている感じとか、22.2chならではの音響演出にトライしてます。業界でも数少ない22.2chに手慣れたミキサーに参加してもらって、微調整しながら精密に作りあげました。

― ところで映像業界の最先端におられる田邊先生は大学ではどのような勉強をしていたのですか?

田邊:應義塾大学の湘南キャンパス(SFC)には、総合政策学部と環境情報学部という2つの学部があり、僕は、総合政策学部卒業なんですが、メディア関係の講義が多い環境情報学部の授業をたくさん履修していて、奥出直人教授のゼミで学んでいました。ゼミのテーマは、映像を使って都市生活をデザインするというもので、ハンディカムを持って街に出て、東京のストリートカルチャーをモチーフに撮影し、ダブルデッキで編集して音楽をつけて、ゼミの仲間の前でプレゼンするんです。この制作作業が楽しくて、映像制作に興味を持ったんです。また、CGアニメーションの巨匠、金子満先生の授業も履修して、CGアニメの基礎を学ぶことができました。今でもCGは興味を持っている分野の一つです。

― 学業以外で、今の仕事に役立っているものはありますか?

田邊:直接、それが映像制作に繋がっているということではないんですけど、大学の春と夏の休みは2ヶ月間かけてバックパッカーをしていました。ジャック・ケルアックやビートジェネレーションに憧れて、アメリカやアジアなどを一人で放浪旅に出かけたんです。今の学生はあまり旅行に興味がないと聞きますが、客観的な視点で日本だったり、日常生活を見つめるのに、一人旅は凄く価値があったと思いますね。学生の間は時間があるので、日常とはちょっと違った視点を持つということを、意識するといいですよね。それから、とにかく映画をたくさん観ることと、本を読むこと。学生時代にいろんなインプットをたくさんして、そのなかで身に付けられるものもあるだろうし、自分のやりたい事が断片的にでも見つかれば良いと思います。

― 本日は大変ありがとうございました。

次回第5回目は(株)ホリプロ代表取締役社長 一般社団法人日本音楽事業者協会 会長の堀義貴さんです。

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