A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 6
CHAPTER.2
これからは才能ややる気があるならどの国で仕事をしてもいい
講義の中盤、堀さんは、学生たちもよく知る日本のものが世界で評価されていることを話題にし、このブームの要因にはSNSによる口コミでの広がりがあると分析。
「日本製で今どんなものが世界で売れているか? 例えばメンズコスメの『GATSBY』(ギャツビー:株式会社マンダムの製品)は、アジアでは国際ブランドです。ボトルでは買えない人たちには小分けしたパッケージがあり、これをデートのときに使うのがお洒落なようです。また伊藤園の『おーいお茶』は、シリコンバレーでとても売れ、グーグルでは社員食堂に置いてあるとも聞きます。それから日本のウイスキー、ニッカの『竹鶴』やサントリーの『山崎』が欧米の専門家たちの間で、イギリスのシングルモルトより旨いらしいと評判で、高値で取引きされている話も聞いたことがあります。ロンドンではとんこつラーメン屋に行列ができ、シンガポールではCoCo壱番屋のカレーが人気。韓国では日本の焼き肉でアサヒビールを飲むのがカッコイイとか….。今はどこの国のものか、こだわる必要がない。インド人でもパキスタン人でもココイチのカレーを食べに来るし、SNSによるクチコミの広がりで東西の交流がどんどん進み、誰もそのことは否定していません。Facebookは世界のエンタテインメント業界でよく使われ、Twitterは日本が強い。しかし日本のエンタメで今まで世界を席巻したのは、ポケモンのように現地語の吹き替えで上手くいったアニメなどで、それに比べると音楽は制限の多い産業なんです」
堀さんが冒頭に話されたように、iPhoneやスマートフォンを持つ手が24時間、国境もなく世界と繋がっているが、しかし、音楽産業は工業製品や外食産業とは違い、言葉に壁がある。続けてさらに掘りさげます。
「みなさんは、J-POPを外国人にどう説明しますか? 実はこれが難しい。日本式音楽とは書けないし、世界に繋がっているとはいえ歌に歌詞がある限り、ここが難しいんです。しかし、じっとしていてもしょうがないので、日本の音楽やゲーム業界ではアメリカやアジアに子会社を置いて活動しています。弊社は『デスノートTHE MUSICAL』(*)で海外展開をスタートしました」
(*デスノートは原作大葉つぐみ、作画小畑健による少年漫画で2003年から2006年まで少年ジャンプに連載。2006年に前編・後編で映画化された。ホリプロによる『デスノートTHE MUSICAL』は、フランク・ワイルドホーン作曲、栗山民也演出という日米タッグで15年に舞台化したもの。浦井健治、柿澤勇人、小池徹平らが出演した日本公演と、ホン・グァンホ、ジュンスらが出演した韓国公演が行われた。2015年4月に日本版キャスト、6月に韓国版キャストで舞台上演され、韓国版は「2016eDaily Culture Awards」のミュージカル部門最優秀賞を受賞。2017年9月に日本版が再演)
「『デスノートTHE MUSICAL』は、世界中で各国の言葉で公演し、ロイヤルティーが入ることを目標としています。僕たちは日本語の壁を破るためにこういった作品で勝負ができる時代を目指しています。まだまだかもしれませんが、これからは才能ややる気があるならどの国で仕事をしてもいいし、みなさんも日本のエンタテインメント業界を目指すなら、このことは就職活動のときに思い出してください」と、最後を締めくくりました。2020年7月に開催される東京オリンピックまで約900日、受講者のなかから活躍している学生もきっといることでしょう。
次回の第6回目は、元キマグレンの(株)音遊 代表取締役のクレイ勇輝さんです。
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