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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7

吉田雄生さん
Interviewee

REC.002 吉田雄生さん

(株)ワタナベエンターテインメント取締役 第二マネージメント本部担当役員

プロフィールの詳細


CHAPTER.1
君たちは今、特殊な時代にいるのでしょうか?

自分の部屋でパソコンを駆使し音楽を制作し、ヒットを飛ばすアーティストが世界中で誕生しています。これは、学生たちもYouTubeなどでよく知るところです。
この現象を吉田さんは、アメリカの18歳のシンガーソングライター、ビリー・アイリッシュやストリーミングチャートを独占しているOffical髭男dism、あいみょんを例にあげ、こんな話から講義はスタートしました。
「民族、年齢、その他関係なく、メジャーの力を借りず世界に発信する、あなたたちと同じZ世代(※1)のアーティストの活躍を僕も注目していますが、ところで、君たちは今、特殊な時代にいるのでしょうか?」
(※1 Z世代とは、1990年代後半~2000年生まれの世代で、全世界に20億人存在するといわれている。SNSのアップデートを通じて自己を表現することが習慣化しており、複数のオンラインプラットフォーム上で共有。目的意識と自主独住が強く、唯一無二のスタイルを重視する)

そして、こう続けました。
「これから昔の話をします。皆さんはレコード時代のボブ・ディランを知っていますか? 彼は1965年にミュージックビデオ(以下MV)を制作しています。この頃、ほとんどのアーティストはライブを行いラジオで宣伝していました。しかし、ボブ・ディランはこんな映像でプロモーションに貢献したのです」
スクリーンにはモノクロ映像の「Subterranean Homesick Blues」が流れた。ボブ・ディラン自身が手にする、手書きの歌詞が書かれた紙を曲に合わせてめくっていくという表現は、55年を経た現代でも学生たちにとって新鮮に感じられことと思われます。

この「Subterranean Homesick Blues」は、アルバム『Bringing It All Back Home』(65年)に収録され、日本では邦題「ホームシック・ブルース」として発売されています。

吉田さんは、少しずつ核心に触れていきます。

「MVの先駆けといわれるボブ・ディランのこの映像を参考にしたと思われるのが、酸欠少女さユりの『ふうせん』鬼めくりリリックのMVで、彼女ばかりではなく様々なアーティストの映像にもこの手法が受け継がれています。どうして、超アナログ的な表現が広がったのか、ここに未来へのヒントがあると僕は思います」

続いてQueenの「Bohemian Rhapsody」(75年)のMVを紹介し、「当時この映像を観て、僕は何を歌っているのか歌詞を調べたり、Queenが純粋に音楽を愛していることをたくさんの人に話したくなるくらいの衝撃度がありました」と話しました。

次にバグルス「ラジオスターの悲劇」(79年)が流れます。これは1980年代に MTV(MVを流し続ける音楽専門チャンネル)の出現によって音楽が視覚化されていく時代の象徴的な映像とされています。

吉田さんは、その後の視覚化時代の代表的な例としてマイケル・ジャクソンの「スリラー」(82年)について「このMVの予算は映画並みにかけられ、アルバムは全世界歴代1位のセールスを記録し、歴史に残るMVになりました」と解説。

学生にとっては初めて観る映像が続きました。講義はレコードからCDへと推移していく80年代に入り、やがて2005年に出現したYouTubeで際立ったMVの紹介に移っていきます。

吉田さんは、アメリカのロックグループOK Goの「Here It Goes Again」(05年)のMVが「YouTube Awards 2006でMost Creative賞を受賞した」ことを話し、その後の作品「I Won’t Let You Down」(14年)が「日本の映像作家が関わり、ドローンを先駆けて使った」ことや、サカナクションの「アルクアラウンド」(10年)が「1カメだけで撮影した」ことなどYouTubeの話題作を解説しました。

そして、映像を観終えた学生に対し、独自のプロデュース論を順序立てこう伝えました。

「自分がどこで、なぜ感動したのかを分析するのがクリエイティブに必要です。僕たちは時代の空気を読み、コンセプトを考え、目的のゴールから逆算して考え、 それをイメージし、プロモーションを行っていきます」

また、自身がプロデュースしているリトグリの「好きだ。」(15年)と「世界はあなたに笑いかけている」(18年)の映像を流し、その責任者としての考えを話しました。

「リトグリは6年前にアイドル全盛の空気のなかで、絆、団結力、清潔、ピュア、活力といったキーワードを考え、人気アイドルたちのように笑顔をふりまくのではなく、汗をふりまくグループというコンセプトでデビューしました。彼女たちは歌が好きなので、アイコンとしてヘッドフォンを使い、MVでは『生歌』と『生バンド』ということや特に『ハーモニーの美しさ』にこだわりました。これがYouTubeで多くの人に見ていただいた要因だと思っていますし、テレビに呼ばれるきっかけにもなりました」

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