A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7
CHAPTER.2
自分の地元の強みを一度考えてみよう!
北海道を舞台にした映画『しあわせのパン』(12年)(『ぶどうのなみだ』(14年)『そらのレストラン』(19年)を手がけた伊藤さん。企画したときの思いはどうだったのでしょうか?
「北海道の生産者を応援したいという気持ちのなかに、私も一緒にモノづくりをしようとベーカリーショップをオープンし『しあわせのパン』を企画しました。北海道産の小麦をはじめ地元の一次産業は本当に大事なものです」
伊藤さんは映画の製作に関わりながら、コンセプトブランド「nord(ノルド)」という北海道産のクラフトや食器などを販売する期間限定のショップを映画公開と同時に東京・福岡・札幌PAROCOで立ち上げ、新しい北海道物産展として展開するなど、付加価値を生み出すクリエイティブで北海道の産業に相乗効果をもたらしたのです。
また、『ぶどうのなみだ』のロケ地になった岩見沢の宝水ワイナリーは試飲ができるショップもあり、さらに、映画で使用されたブランコも展示するなど、海外からの観光客も訪れています。
さて、チーズを題材にした『そらのレストラン』は「人生の出会いが発酵だとしたら、積み重ねていくのとが熟成という構想から始まりました」と伊藤さんは話します。
第三弾目となる『そらのレストラン』(監督:深川栄洋)は、第22回ソノマ国際映画祭にて、日本映画としては初となる外国映画最優秀審査員賞を受賞。またスペインのサン・セバスティアンで毎年開催されているサン・セバスティアン国際映画祭 カリナリー部門(食部門)に招待作品として出品されました。この映画祭 に出席した伊藤さんは、そのときの様子をこう語ります。
「サン・セバスティアンは、町全体がみんなで取り組み、努力して美食の町になりました。例えばシェフを育成するための学校をつくり、シェフのなかにはレシピを公開する人もいて、これは、美味しいものをみんなで共有し、そのレシピでさらに町を活性化させるという考えです。その場で作る喜び、食べる喜びを分かち合う美食クラブが100ぐらいあり、歴史的にも食に対する意識が高いのです」
伊藤さんは続けます。そして最後に、学生たちにこんなことを投げかけました。
「私たちは、生産者さんたちを紹介頂き、食に関するディスカッションや映画祭のディナーに参加したのですが、その世界観から思ったことは『自分の地元の強みを一度考えてみよう!』ということです。地域と芸能。エンタテインメント事業を行うには、やはり共生、共働(シナジー)が重要です。みなさんもぜひ、自分の地元の強みを一度考えてみてください」
北海道の食やそこに生きる人たちをテレビ、映画などのメディアで縦横無尽にプロデュースしている伊藤さんの熱い話に学生たちはどんどん引き込まれ、これまでの講義にはなかった食分野で活躍したいと考える学生も少なくなかったのではないでしょうか。
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