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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7

奥谷達夫さん
Interviewee

REC.005 奥谷達夫さん

吉本興業(株)代表取締役副社長

プロフィールの詳細


CHAPTER.2
よしもとでライブを制作しているはなし

講義中盤に入ると奥谷さんは、最近ご自身が気になっているいくつかのことを話しました。

「自分たちの商売は、素晴らしいと感じたものをだれかに伝えていくことで、それをプロの仕事としてやって、それで食っていくことだと思っています。それは難しいことではなくて日常のいろんなところに刺激があって、例えば僕が今、関心を持っているのが、『バチェラー3』(※1)、これ皆さん知っていますか?」(学生の約1/3が手を挙げました)

※1 『バチェラー3』:Amazonプライム・ビデオで配信された婚活リアリティーショー『バチェラー・ジャパン』のシーズン3。才色兼備の独身男性(バチェラー)のパートナーの座を20人の女性が競い合う。

続いて、映画『宮本から君へ』(※2)、『愛なき森で叫べ』(※3)を話題にしました。

※2 『宮本から君へ』:『モーニング』(講談社)に、1990年35号から1994年34号にかけて掲載された新井英樹の漫画を、実写ドラマ化。文具メーカーの営業マン宮本浩(池松壮亮) が悪戦苦闘しながら成長する姿を描いた。
※3 『愛なき森で叫べ』:(園子温監督、椎名桔平主演で2019年10月11日に配信開始されたNetflixオリジナル映画。4KHDR作品。

また、この講義のときは『M-1グランプリ』(ABC)の決勝前でしたが、優勝したミルクボーイについて「圧倒的なダサさで破壊力があります(笑」」と紹介し、さらに、芸歴50周年を迎える桂文珍の国立劇場20日間独演会(2020年2月28日〜)にふれ「20日間連続、40演目のすべてネタを替えてお客様と一緒に空気をつくっていく姿はすごいです」と語りました。

そして、「余談ですが、よしもとの芸人の成長モデルを説明します」と、サクセスまでの大きな流れを次のように説明しました。

1 NSC(育成学校)卒業、オーディション合格
2 若手劇場出番〜前説〜単独ライブ〜賞レース
3 本劇場出番、単独ライブ〜営業〜動画配信
4 テレビロケ、テレビひな壇
5 テレビ冠タレント司会者
6 映画・ドラマ、CM、歌、書籍、グッズ開発

続いて、よしもとでの主な職種について、「マネージャー、劇場支配人、営業(企業、チケット)、プロモーション、管理(人事、総務、経理)、プロデューサーがあります」と話し、「プロデューサーとは何か?」についてこう話しました。

「エンタテインメントの現場を仕切る幹事、最高の状態に仕上げるためのチームの牽引者、それを職業として責任もってやりきる、これがプロのプロデューサーです」

講義終盤、奥谷さんは、お笑いのライブプロデューサーの仕事について自身の体験に基づき、「何のために何をするのか決める〜お金のことをやりきって完了」と、やるべきことの流れをわかりやすく教えてくれました。

【ライブプロデューサーの仕事の流れ】

1 何のために何をするのか決める。
2 企画を決める。
3 出演者を決める。スタッフを決める。
4 会場を決める。日時を決める。
5 予算を計算して、チケットの値段を決める。必要なら協賛獲得に動く。
6 チケットの発券作業をする。
7 宣伝の計画を決める。
8 内容を決める。
9 リハーサルをする。
10 当日の運営態勢を決める。
11 当日、現場を仕切る。
12 お金のことをやりきって完了。

そして、奥谷さんは、「エンタテインメントとは何か?」について、「大切な誰かに教えてあげたい素敵な何か。面白い映画、感動する舞台、最高の音楽、興奮きわまるスポーツ、めちゃめちゃうまい食事、ドキドキする遊び、刺激的な旅先、チギれるような経験、これらすべてだと思います」と話しました。

さらに、自身のこれまでの体験から「プロデューサーをやっていて直面する嫌なこと」を、こう言いきります。

□あらゆる関係者から文句を言われる。わがままを言われる。
□面白いと思ってやっていることを否定される。
□現場でお客様から様々なクレームを受ける。
□切符が売れず、不安でたまらない。
□やるべき作業が追いつかず、ついつい嫌になってしまう。
□防災など背負うべき責任が重い。
□我々は、主観の世界で評価されている。

しかし、こういった嫌なことがあっても、それでも、プロデューサーをやっていてよかったことを「劇場の袖で、例えば漫才を観ていて、鳥肌が立つような、人のエネルギーを体感したことが何度もあります。そんなスターが育つそのプロセスを共有することができるのは、この仕事についたからだと思っています」

そして、講義の終わりをこう締めくくりました。

「皆さん、面白い人生を過ごしてください。(自分自身にとっての)選択をしてください。時間がたつのはあっという間です。
本日はライブを制作する話をしました。これはあくまでも、こんな人生もあるというただの事例です。こんな人生を面白がっている人間も存在するという、ただの事例です。
僕はこの仕事を面白がっています。たまたまですが、ここにたどり着きました。そして、今日は僕の仕事を分解して少し説明しました。お聞きになられた通り、その実態はなんてことはない、誰だってやれることです。世の中、さほど難しいことなんてないんだとも思います。だいたいは自分が難しく考えているだけ。
うまくやれるかどうかのポイントは自分で選択していくこと。選択するとは、それ以外を捨てること。それを覚悟すること。面白い人生を過ごそう、そう思う気持ちがあれば、自分でそのように導くことが人は可能です。この学校には素晴らしい講義がたくさんあると聞きます。実にうらやましい話ですね。ぜひ、皆さんの最高の選択をしていくために、これからも有意義な時間を過ごしてください」
これは、学生たちへのエールでもありました。

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