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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7

夏目公一朗さん
Interviewee

REC.011 夏目公一朗さん

(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント スーパーバイザー

プロフィールの詳細


CHAPTER.2
スタジオは、人を増やしており就職のチャンスが広がっている

「日本のアニメは、以前は海外での公開に半年ぐらいのタイムラグがあるのが普通でした。現在では制作を早めて字幕も入れて、世界同時展開のマーケティングになってきました。このことで日本企業の海外展開が促進され、アニメイベントやアニソンライブの共同開催も進んでいます。アニメ業界はようやく『点』から『面』へ、『個』から『業界』へと日本連合による海外展開が進行しています」と夏目さんは話し、視察に行ったロサンゼルスのアニメエキスポなど海外のイベントの記録写真がスクリーンに次々と映し出されました。

なかでも『セーラームーン』『ドラゴンボール』などの海外のコスプレイヤーたちのユニークな姿に学生は見入り、夏目さんが「どこの国でも、なぜか日本刀のオモチャが人気です」と話すと学生たちはざわつきました。また、昨今では地元の人気 YouTuberも宣伝に一役買い、会場で一緒に写真を撮るコスプレイヤーたちも多いそうです。フィギュアなどのグッズを販売する日本のメーカーのブースの人気ぶりも、紹介されました。

和やかな雰囲気のなか、夏目さんは「世界中で注目されている日本のアニメですが、しかし暗雲が垂れ込めています」と、中国との関係の変化を説明しました。

「中国は国策として自国アニメの育成を目指しており、2019年春から政府による海外アニメの大幅な輸入規制がしかれ、検閲も強まりました。これまでの、テレビ放送への強い規制に比べ緩やかだった配信への方針が改められたのです。このことで日本のアニメは正規配信の本数が縮小し、収入に結びつかない海賊版配信の復活に悩まされることになりそうです」

そして、夏目さんはこう続けます。

「現在、日本のテレビアニメは年間300以上のシリーズが放映されています。でも本数が多ければいいというわけではなく、供給過多というか、異常だと私は考えています。視聴者に対してアプリやSNSとの時間の奪い合いのなかで、キラーコンテンツが不足しています。類型作品の多さによってマンネリ感を持っているファンも多い筈です。制作上の問題を話しますと、まず原作不足(ゲーム、漫画、ノベル、オリジナル、UGC)があります。この問題を解決するには、新鮮な物語をつくり出す企画の絞り込みが必須です。手間ひまと制作費をかけた斬新な映像や魅力的キャラクターを生み出していかなければなりません。収益源となる『売れる』ゲーム化への意識も重要です。

また、人材不足(監督、キャラクターデザイン、原画、背景美術)もあり、制作現場が疲弊するとクオリティの低下が出てきます。そこで各社はなるべく人を増やし、給料を上げるなど労働環境の改善を行っています。いいクリエイターの奪い合いにもなっています。

そこでこれからアニメ業界を目指す人たちに言いたいのですが、これまで狭き門だった大手のスタジオも人を増やしており、みなさんにもチャンス広がっています。ぜひトライしてもらいたいと思います。また先ほどキラーコンテンツが不足していると言いましたが、久々のメガヒットとなった『鬼滅の刃』(原作:吾峠 呼世晴)は、世界も注目している作品だと思います」

アニメ業界を目指す学生には、さまざまな作品をプロデュースしてきた夏目さんの話に、それぞれが今後やるべきことの道筋へのヒントを得た、濃い内容だったと思われます。講義終了後、夏目さんは「ちょっとだけ残ります」と壇上から降り、学生たちの質問を直接受け付けました。

『鬼滅の刃』:『週刊少年ジャンプ』で2016年11月より連載がスタートし、2020年1月28日時点でシリーズ累計発行部数は4000万部を突破している。アニメは2019年4月からTOKYO MX他にて放送開始。AbemaTV、dTV、Amazonビデオ、Huluなどインターネットでも配信され、アメリカではCARTOON NETWORKで英語吹き替え版を放送。『東京アニメアワード2020』ではテレビ部門の作品賞などを受賞。劇場映画が、今年公開される。

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