ライブビジネスと社会昭和音楽大学
2016年講義内容
2016年9月15日、ACPCと昭和音楽大学は産学連携講座「ライブビジネスと社会」を開講しました。2011年度より継続しているACPC寄附講座「音楽産業概論II」をリニューアル。音楽産業の第一線で活躍されている方々を講師にお迎えして、社会環境の変化著しい今日におけるライブビジネスの現状や課題について講義をしていただきます。
今年度は、ゲストによる講義を踏まえて受講者がグループディスカッションを行い、理解を深めるとともに音楽産業の未来について考える時間も設けました。近隣住民の皆様にも聴講にお越しいただくことで、「地域社会との連携」にも取り組んでいます。
9月15日の初回は、昭和音楽大学の森川卓夫教授によるガイダンスならびにACPC事務局の鬼頭隆生がライブビジネス市場についての概説を行いました。
第2回(9月22日)の講師は、株式会社ディスクガレージの河津知典氏。「プロモーターの仕事①」と題して、主に国内アーティストを対象とするプロモーター業務を中心にお話を伺いました。
第3回(9月29日)はそれまでの講義をテーマとしたグループディスカッションを実施。ディスカッションには地域住民の方々もご参加下さり、活発な議論が交わされていました。
Theme 1ライブビジネスの構造とレコードビジネスの相違
多数の関連企業と調整を行い、会場予約からチケット販売、会場運営、経費精算などを行うプロモーターがライブを実施する中心となっている
かつてはプロモーターやレコード会社、プロダクション、メディアなどの業務区分が明確だったが、近年は多くの企業がライブビジネスやアーティストの発掘・育成に取り組むなど、ボーダレス化していることを初めて知った
Theme 2ライブ市場 堅調の理由の検証
アーティストの生演奏だけではなく、豪華なセットや演出を楽しめるなど、その会場でしかできない経験ができる
音圧を肌で感じられたり、観客同士の一体感や臨場感がある
昔はコンサートというと敷居が高かったが、現在はWEBなどを使えばチケットが入手しやすく、手軽に参加できるようになっている
動画共有サイトやサブスクリプションサービスが一般化して、CDを購入しなくても手軽に音源を聞ける機会が増えた一方、リアルな体験の場としてのコンサートのニーズが高まっていくと思う
ドイツなどでは休みの日に自由に演奏できる場があると聞いた。日本でも公園に小さなスペースでもいいので、そういった場所を作ってほしい
Theme 3フェスティバルの隆盛について考える
「夏の野外フェス」というような夏の風物詩だけでなく、いまや四季を通じたレジャー化していて、さまざまなエリアで開催されることで地域活性にもつながっている
フェスの数が増え、飽和状態という声もあるが、地域性やテーマのある特色を持ったフェスが全国的に増えている
Theme 4ライブ産業の課題
会場の絶対数が足りない。地方を盛り上げるためにも、さまざまな場所に会場を作ってはどうか
本当にコンサートに行きたい人が行けなくなってしまう、チケットの高額転売問題を解決しないといけない
Theme 5プロモーター、レコード会社、プロダクションのボーダレス化
各社の事業が統合されれば、アーティストを一括して育てられることで仕事の流れがスムーズになり、利潤も生まれやすいのではないか
各社がひとつにまとまるような形では、各々の個性が失われてしまわないか
Theme 6音楽大学を卒業すること
「音大を卒業したことは、<音楽に一生懸命取り組んだ>とみなされて評価される」という言葉に励まされた。もし音楽とは関係のない仕事に就いたとしても、取り組みが評価されたら嬉しい
「音楽を知っていることを上手く利用すると良い。学んできたことに自信を持ち、その経験を利用する」というアドバイスをいただいた
Theme 7コンサートの地域性
その地域の展望を見越して演奏会などを開催することで、将来の音楽市場につなげられる。その地域についてよく知ったうえで、ライブの構成などを決めていく必要がある
得られる音楽情報には地域差があると聞き、そのことを考えてコンサートをプロモートする必要があると感じた