A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
講義内容一覧 (2015年度 東京工科大学実施)
第2回 アーティスト・プロデュースとプロモーションについて
2015/10/6
第2回は、ワタナベエンターテインメント取締役の吉田雄生氏によるアーティスト・プロデュースとプロモーションについての講義。これまで吉田氏が担当した中川翔子やLittle Glee Monster(以下リトグリ)のプロデュース、プロモーションについて聴くことができるとあって、学生はペンを走らせながら熱心に受講していた。リトグリのプロデュースを始めてから「昔読んだビートルズやローリングストーンズのプロデューサーたちの本なども読み返し、今の時代に重ね合わせ、とにかく売れるためには何でもやろう」と自分の中で決めていたのだという。徹底したイメージ戦略とメディア戦略をクリエイティブなブレーンと共に進めていった結果、いまやリトグリは“歌がめちゃくちゃ上手いアイドル”としてブレイク。吉田氏は彼女たちをプロデュースし、さまざまなプロモーション活動を実践したことで、ようやく自分なりのプロデュースの方法論を確立する。それが、①企画 ②実行 ③継続 ④拡散(SNSやラジオ、ネット) ⑤点火(テレビ)であり、プロデュースとは、この①〜⑤の繰り返しであると述べた。プロデュースする上で最も大切にすることは、アーティストと「どうしたい」「なぜやりたい」のかを日々話し合うことだという。プロデュースには人間力が必要。人の心を動かせることが、この仕事の一番の醍醐味であると締めくくった。
第3回 アニメーションとライブ・エンタテインメント
2015/10/20
第3回目の講義は、株式会社アニプレックス取締役会長の夏目公一郎氏が講師を務めた。講義では、日本のアニメーションの市場規模と海外市場拡大の動きなど、最新情報が満載。学生たちは真剣な表情で聴き入っていた。夏目氏によると、近年、アニメーションの現場では「製作委員会方式」が主流とのこと。製作と制作の違いについては、ビジネスプロデューサーを中心に、映画のコンセプトから、資金の調達、利益の配分、スポンサーとなる企業の委員会組成等を担うのが製作、予算やスケジュール、スタッフを管理し、監督を中心に実際の作品づくりを担当するのが制作であると説明した。さらにアニメーション業界の今後については、12万人を動員したAnime Japanや東京ドームを満員する水樹奈々のコンサートなど、近年アニメを主体にしたイベントの人気が高まりつつあり、またアニメツーリズムなど、日本のアニメ産業には、多くの可能性があるとの認識だ。一方、海外に目を向けるとアニメフェスやエキスポなどを通して日本アニメは盛り上がりを見せているものの、アニメバブルが消滅し、収益は以前より減少していると述べた。今後の課題は「正規コンテンツの世界同時配信、共同配信用のサイト、各種エキスポへの合同出展、突き抜けた才能・作品の創出、フルCGハイクオリティアニメの製作などが必要」であり、世界各国のファン開拓を続けることが重要と語った。
第4回 ライブ・エンタテインメントの現在
2015/10/27
第4回は、株式会社ディスクガレージ代表取締役社長であり、提携講座を開講する一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長を務める中西健夫氏が登壇。講義ではACPCの役割や音楽の流行について年代別の解説がありつつ、後半にはライブ・エンタテインメントの現状と将来を考える大変興味深い講義となった。コンサート市場の分析では「年々拡大して売上も右肩上がり。2014年の動員数は4,261万人で、売上が2,749億円。前年比118.6%と高い伸びを示している」とし、去年初めてCDのセールスをライブの売上が超したことを受け、「消費者がリアルな場を求めている顕著な例で、すでにライブがエンタテインメント界において大きなウエイトを占めているのは疑いようがない」と語った。しかしながら、来日する海外アーティストは滞在時間が短く、大規模会場が確保できないためホールなどで行うことも多いが、会場を押さえられず素通りしてしまうアーティストも多数という事実を紹介。さらに改修や建て替えのため首都圏のイベント会場が2016年に相次いで閉館・休館する「2016年問題」に触れ、このような会場不足の問題は、音楽業界に大きな影響を及ぼす懸念があると指摘した。最後に、これからエンタテインメント業界に必要なスキルとして「対応能力が求められる」と中西氏。アクシデントのときでもきちんとした対応ができる、いざという時は自分の想いで論破できることが重要と語った。
第5回 ロケ地を求めて全国縦断
2015/11/3
第5回は、映画プロデューサーとして『日本沈没』『木更津キャッツアイ』『十三人の刺客』『図書館戦争』『図書館戦争 THE LAST MISSION』をはじめ多くの作品に携わり、業界の第一線で活躍する吉田浩二氏による講義。『図書館戦争 THE LAST MISSION』が公開してから約1カ月後に講義を迎えたこともあり、学生たちの眼差しは真剣そのもの。映画制作におけるプロデューサーの役割から、4つに分類されるプロデューサーの種類とその仕事内容、ロケ地選びやキャスティングのこだわりまで、ヒット作を手がけたプロデューサーが発する言葉に聴き入っていた。 『図書館戦争 THE LAST MISSION』で出てくる武蔵野図書館は、「新潟の十日町情報館、北九州市立中央図書館、水戸市立西部図書館、山梨県立図書館の4カ所でロケを行った」とし、それに自衛隊の基地での映像を加え、VFXとスタッフの編集作業によってひとつの場所として成り立たせているのだという。原作の持っているメッセージの多様性を視聴者に伝えて、引き込ませなれければならないため、撮影はとても苦労したと語る。「撮影中は多くのトラブルが待ち受けています。プロデューサーには、それに対する対応力と決断力が必要」とのこと。最後に「いい映画は、さまざまなタイプ・個性の俳優やスタッフが、きれいに融合したときにこそ生まれる」と説き、そこにプロデユーサーの実力が問われるのだと締めくくった。
第6回 グローバル社会の中の音楽コンテンツ
2015/11/10
6回目の講義は、メジャータレントを数多く抱える芸能プロダクションであり、CM・テレビ番組などコンテンツの制作も手がけるホリプロ代表取締役社長、堀 義貴氏が登場。「グローバル社会の中の音楽コンテンツ」をテーマに、エンタテインメントの未来を担う学生たちに、日本の音楽コンテンツの可能性を説いた。音楽コンテンツの現状について堀氏は「ライブ・エンタテインメントの分野は日々進化していて、世界的にも音楽が視聴されなくなったという事実はありません。しかし、音楽が“商品”として購入されなくなったという事実はある」と解説。 日本の市場規模は7,000億円から3,000億円まで減少しており、音楽配信でややカバーしたものの、どんどん産業が衰退していると語る。将来の展望としては、アーティストの海外進出も視野にあり、特に人口増加の激しい東南アジアでの競争はますます激しく、エンタテインメントを売り出すには、その土地や文化、また日本の文化を十分に把握し、それらをどう組み合わせるかが大事とのこと。「極論だが、海外展開やネットの拡大を上手くやらなければ2020年の先にホリプロは赤字転落」と述べ、ミュージカル『デスノート The Musical』の海外公演が大ヒットするなど、今後積極的に海外進出する意向を示した。世界で活躍したいと思っている学生へ「世の中にある全てが刺激であり、それを摂取していく必要がある」と語り、講義を終えた。
第7回 エンタメビジネスの荒波を乗り越えろ!
2015/11/17
第7回は、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の代表取締役CMO林 真司氏が登壇。総合エンタテインメント企業として成長を続けるエイベックスの歴史とともに、エンタテインメント産業の現状と現在、そして今後について語る講義に、学生は真剣に耳を傾けていた。林氏の学生時代は現エイベックスの社長である松浦氏らと、赤字経営だった貸レコード店を月商2,500万円を売り上げる店舗へと押し上げ、日本全国から注目される存在だったという。卒業後一旦は銀行に就職したものの松浦氏に誘われエイベックスに入社。日本有数のエンタテイメント企業へ発展する会社を営業・マーケティングの面から支えていくことになる。「東京ドームを史上最大級のディスコにしようとか、ディズニーのキャラクターにパラパラを踊らせようとか、いろいろな仕掛けがうまくいった」と当時のエピソードを交えつつ、会社急成長の要因は「レコードメーカーとしての経験値か浅かったので、既成概念にとらわれることなく、面白い!と思うことにどんどん挑戦できた」と語り、いつもユーザー目線を大切する姿勢が良かったのではないかとも述べた。そして今後のエンタテイメント業界の動向として、音楽の楽しみ方、聴き方が多様化してきたためCDやDVDなどパッケージの売り上げは業界全体が縮小傾向にある一方、ライブ関連事業の売り上げが着実に伸びているとし、「mu-mo」など音楽配信サービスや「dTV」、「UULA」などの動画配信サービスを充実させるとともに、ライブプラットフォームの進化・拡大を進めていきたいと語った。エンタテインメントのさらなる感動を提供するため、「誰もやらないから、オレたちがやる!」の気概と遊び心を持って進んでいきたいと語り講義を締めくくった。
第8回 アーティスト・マネジメントの現場から
2015/11/24
8回目となる講義は、日本音楽制作者連盟の理事であり、BUMP OF CHICKENやサカナクションのマネジメントを手がけている野村達矢氏が登場。現在の音楽コンテンツ・ビジネスでは、CDの制作・販売、ライブ・コンサートの実施が収益の2本柱であるが、CD売り上げの落ち込みが激しい一方で、コンサート入場料の収入は増えていると市場規模の推移について説明。ライブ・コンサートで注目すべきは、ここ数年フェスが増えている点。例えばキャンプ色の強い「ライジングサン」、都市型の「サマーソニック」、フェスのパイオニア「フジロック」など、それぞれに特色を打ち出して動員数を伸ばしている。コンサート会場・ライブ会場に行くとことはハードルが高いことであり、会場が閉館もしくは改修のため使用できなくなる「2016年問題」も重なるため、今後行くことに意味があるライブを企画するためにイノベーティブな目標を常に掲げて取り組む必要があると述べた。
またインディーズ時代のサカナクションを発掘したことを引き合いに、新人発掘のポイントを解説。「モノサシは2つ必要。主観的な趣味での好き嫌い。客観的に見て良いか悪いか。この2つのモノサシを使って世の中に受け入れられる新人を発掘していく」という。客観的な観点は自分ではないところに基準があるため、日頃から音楽を聴いてライブに行き、リサーチと経験を蓄積しながら、モノサシの精度を上げる努力を欠かさないことが大切と語った。
肩書きは講義当時のものです