A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 2
CHAPTER.1
自分が受け持っているタレントを一番愛してないとダメ
― 中井先生は、マネージャーからのスタートですが、その経験をお聞かせください。
中井秀範氏(以下中井と敬称略):最初からマネージャーでしたね。3ヶ月くらい研修というか、劇場の事務所のお手伝いをするんですね。出番表を配ったり、芸人さんに挨拶に行ったり、もぎりを手伝ったり。当時は漫才ブームでしたから、もの凄い数のお客さんがいらっしゃって、近所の商店街の邪魔にならないように並んでいただくとか、そんなことをやりました。
その後に桂三枝、今の文枝の現場のマネージャーになったのですが、スケジュールを管理するマネージャーが上にいらっしゃって、また、身の回りのお世話はお弟子さんがなさるので、僕はあまりすることがなかったんですよね。でも、文枝に付いてまわっていると、何度もテレビ局に出入りし、いろんな人たちにお会いできて、少しずつ名前も覚えてもらいました。
― その後、東京ですよね。
中井:大阪本社で1年程現場マネージャーをやった頃、東京に転勤になりました。東京は当時「オレたちひょうきん族」(1981-89フジテレビ系列)などが花盛りでした。
僕は、大阪からいらっしゃった芸人さんを東京の現場へ連れていく仕事をしていまして、のちに明石家さんまのマネージャーをさせてもらって、それから大阪の新喜劇の仕事もありました。劇場に詰めて舞台のダメ出しとか、芸人さんに台本を配ったり、ADみたいな仕事をしていました。ここで芸人さんや新喜劇の人たちにも名前を覚えてもらって、初めて一本立ちできるというか、そんな感じですね。
― そういったご経験から、どんなことを覚えましたか?
中井:何かを覚えたというよりも、それこそ芸人さんとの距離の取り方というか、僕は10年弱のマネージャーの経験がありますけど、一番大事やなと思ったのは、自分が受け持っているタレントのことを一番愛してないとダメじゃないか、ということです。この人が日本一だと思ってやらないと。
かといって、ダメなところまでも全部「これでいいんだ」と言ってしまうと、自分のためにも本人のためにもならないし、一番愛しながら、一番厳しいお客でもないといけない。客観的に見ないといけないんです。でも、なかなかこれが大変なんですね。
― べったりはいけないということですよね。
中井:そうなんですよ。僕のさんまちゃん、僕のダウンタウンになってしまうと、やっぱりろくなことないですから。客観的に見るもう一人の自分が必要です。それはマネージャーをやりながら覚えたといいますか、番組のプロデューサーや舞台のプロデューサーをやらせて頂くときも同じですね。自分の作品を一番愛してないといけないけれど、最初のお客として厳しく見なければならない。
そして、演者さんのいいところはきちんと誉める。でも、ここはちょっとと思ったところは、誉めた後で「そやけど、ここはこうした方がええかもね」と。決して「あれ、あかんぞ」ではなくて、「こうした方がええんちゃうかな」といった言い方で伝えることも重要です。
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