A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 3
CHAPTER.2
決して浮き世離れせず、柔軟な頭を保つこと
― 講義では、海外進出についてのお話もありました。特にアジア進出と欧米進出の違いなど、とても興味深い内容でした。
堀:アジアのマーケットは韓流が席巻しており、今となっては一朝一夕には参入できないですよね。10年位遅れたな、とここ数年感じています。それから、世界地図を見ると、日本の位置は北米・欧州からだと飛行機で13時間、アジアも遠いところでは7〜8時間ぐらいかかりますよね。この時間はトランスポート等のロスもあり、地理的に不利です。日本を中心とした世界地図ではなく、世界標準で見ると日本の位置はFar East(極東)、右の端っこです。インターナショナルな視点ではそうなっています。
― 本当にそうですね。こういった意識を持つと、堀先生が講義でもおっしゃったように、最低でも一つの外国語は必要ですね。
堀:ホリプロ所属の藤原竜也が、ロンドンに短期留学していた時、現地のパブで一緒にビールを飲んでいたら、地元の方が「君は映画スターだよね?」って声をかけてきたんです。そのとき、未来をどうしていくか?という考えが頭をよぎりました。やはり役者たちが英語をしゃべり、ビジネスとしても英語で対応することが必要だろうし、我々も英語、中国語、韓国語、などの契約書を読める語学力も必要だろうと。これからエンタテインメント業界で仕事するならば、最低でも一つ、外国語は必須で、言語ばかりではなく、その国の文化や歴史にも詳しくなってもらいたいですね。
― 講義では、書籍『統計学が最強の学問である』(西内啓著・ダイヤモンド社)にも触れましたが、数値からわかる現実はやはり目を向けなければなりませんね。
堀:現在の日本の人口構成(※1)を見てみると、高齢化のスピードが早くて、異常ですよね。また、少子化で人口も減っていきます。これは先進国では経験したことがなく、これから20年後、30年後の65歳は可処分所得(個人が自由に消費できる所得総額)が減少し、お金を使う人たちが減ることが予想されます。するとエンタテインメント分野を観に来てくれる若い人たちも減る可能性があり、そういう統計的なことからも、これからのことを絶えず考えなければいけません。
(※1 65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,300万人(前年3,190万人)となり、総人口に占める割合(高齢化率)も26.0%(前年25.1%)と過去最高。出典:平成27年版高齢社会白書/内閣府)
― 増えるものがないわけですからね。
堀:だったらよそのマーケットを引っ張ってくるか、拡大可能なマーケット、ニーズを増やす、それだけですよ。うちの社員にも言っていますが、ラッキーなことを待ち望んでも仕方がないし、君たちの時代は相当きついぞと。だから今やろう! これから外国のマーケットを開拓し、それを拡大することを、誰かがやってくれるわけではないということです。
― そのようななかで、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックはどのようにお考えですか?
堀:まず日本に来てもらうことが大事です。そのためにはインバウンドのPRが大切ですし、この機会に多くの外国の方に、本物の日本を知ってもらいたいですね。ここを境に、日本発のコンサートや演劇を海外の方が日常的に観られるようにならないといけないと思っています。
― それでは最後に、「仕事で最も大切にしていること」を教えてください。
堀:エンタテインメントの世界にいるからといって、決して浮き世離れせず、柔軟な頭を保つことですかね。そのためにはテレビの情報ばかりに同調しないで、例えばネギ1本でも今いくらするのか、自分の目で確かめて、普通の人たちの感覚を知ることです。これを知らないといったらアウトでしょうね。
― 本日はありがとうございました。
(次回は、ミュージシャン、音楽プロデューサーの高野寛さんです。)
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