A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7
CHAPTER.2
グローバルにものを考えるときはワールドマップを考えないといけない
講義中盤、堀さんは、学生へ「これから、皆さんに世界地図を描いてもらいます」と語り、学生が2名壇上にあがりホワイトボードに地図を書きましたが、それはどちらも日本を中央にしたものでした。
それを見た堀さんが、解説します。
「世界201カ国で、日本は人口約1億3000万人で経済では世界第3位、人口では10位、国の土地面積は61位、でも海を含めると領土では世界7位ですが、グローバルにものを考えるときはワールドマップを考えないといけない。
ワールドマップでは日本を中央とした世界地図ではなく、日本の位置はFar East(極東)、右端になっています。
日本が極東に位置されている世界標準地図があるのに、日本人が描くとなぜ日本が真ん中になるのか? こういった位置関係を考えることは、当たり前に重要です。
日本の位置は北米・欧州からだと飛行機で12〜14時間。アジアへは、羽田から7時間で行けるところに40億人も住んでいる。地政学的にも我々は、アジアにもっと目を向けるべきで、今後皆さんが仕事をする上でのマーケットでは、最大のチャンスを迎えるはず」
やがてステージのスクリーンに、ホリプロがこれまで手掛けてきたミュージカルなどの外国人クリエイターとのコラボレーション作品の紹介がありました。
オリジナルミュージカル『生きる』2018年:ジェイソン・ハウランド
ミュージカル『メリー・ポピンズ』2018年:海外クリエイティブ・チーム
ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』2017年、2020年:海外クリエイティブ・チーム
ミュージカル『わたしは真悟』2016年:演出・振付/フィリップ・ドゥクフレ
音楽劇『羅生門』2017年:演出・振付・美術:インバル・ピント&アブシャロム・ ポラック
オリジナルミュージカル『デスノート THE MUSICAL』 2015年、2017年:フランク・ワイルドホーン
ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』2014年、2019年:海外クリエイティブ・チーム
ミュージカル『100万回生きたねこ』2013年、2015年:インバル・ピント&アブシャロム・ ポラック
マシュー・ボーンの『ドリアン・グレイ』2013年:翻案・演出・振付/マシュー・ボーン、UK&日本人キャスト出演
舞台『ANJIN〜イングリッシュサムライ〜』2009年、2012年:演出/グレゴリー・ドーラン、RSCカンパニー出演
これらの公演事業で海外戦略を推し進めている堀さんですが、なぜ、新たな一歩を踏み出したかをこう言います。学生たちは『週刊少年ジャンプ』に連載された漫画「DEATH NOTE」はよく知るところです。
「これらのミュージカルは、最初は日本人に観てもらいつつ、できるだけ外国の人にもたくさん観に来てもらいたいという考えで始めました。その先、一刻も早く日本の外で上演する、ということを想定しています。日本のエンタテインメントのマーケットは、99.9%、日本で生まれて日本で消費されるという状況が60年近く続いてきて、それでも世界2位のエンタテインメント国でした。
近年、アジア各国が伸びてきて、相対的に日本のパワーが落ちてきてガラパゴス状態という状況になるかもしれない。日本のエンタテインメント制作者に残された未開のマーケットは、インターネットと海外だけ。ここ以外、攻める場所がないということを考えました」
堀さんは、これらの事業を展開してから海外でのレセプションパーティなどで体験したことを話し、最後、学生にエールを送りました。
「監督や関係者が集まったパーティで日本人のグループだけが通訳を入れた会話をしており、これだと次の仕事にスムーズにいけませんよね。この壁が何か劇的に変化しない限り、外国人が理解できるコンテンツを作って広げようとしてもうまくいかない。
ですから、皆さんの世代はハイブリッドな考えをもって外国から学び、できるだけ外国の人とたちに喜怒哀楽を全部話し、熱を伝えてほしいと思います。そこれから30年たったときに、英語がしゃべれないということがないように、頑張る明日になってほしいと思います」
ホリプロが手掛けているオリジナルミュージカル『生きる』(1952年:黒澤明監督)は、市村正親、鹿賀丈史のWキャストで2018年に上演されたが、2020年10月に日生劇場で再演されることが決まった。アメリカでは大学で映画エンタテインメントを専攻している人たち向けの名作上映会で、『生きる』を上映することが多いそうです。
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