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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7

松任谷正隆さん
Interviewee

REC.007 松任谷正隆さん

音楽プロデューサー/東京工科大学メディア学部客員教授

プロフィールの詳細


CHAPTER.1
別の意見があってそれがよかったらひとつ学べてラッキー

司会(神舘和典さん):松任谷さんは、なぜ「松任谷由実 SURF&SNOW in Naeba 」での【Y-topia】をメディア学部の学生たちとやられているのですか?

松任谷正隆さん(以下、松任谷と敬称略):学生が参加した当時は、光回線などがまだなくて、インターネット中継が難しい時代でした。そういった中だと映像が粗く、学生たちが手伝ってくれるなら彼らも僕らも学ぶところがあるだろうし、そんなことから始まりました。しかし、現在は回線も速くなったので、だんだん僕らが学生たちに求めるレベルも高くなっています。

司会:学生たちと一緒に行うメリットは、どんなところにありますか?

松任谷:なんでも平均点以上のことができるのがプロだとしたら、学生、アマチュアは一つのことだけを集中してやっているから、プロ以上のことができたりするんです。

司会:その一例は?

松任谷:例えば、この曲はこういうふうに撮ろうというミーティングをしているなかで、やはり、一曲一曲同じカメラワークだと飽きてしまいますよね。学生も曲によって違えば、そのほうが観ている側も面白いと考えます。だから学生には、相乗効果があるので撮りたいというものは自由に撮らせています。

司会:学生しか出ないアイデアとかはありますか?

松任谷:僕はそれを期待しています(笑)。今は、映像がよくなってきているし、すぐにYouTubeにあげる人も出ているし、そうなると、プロ以上のものを学生は要求することも多く、プレッシャーのあるなかで彼らなりにいろいろと考えています。

司会:では、僕からの質問ですが、アレンジャーのお仕事のとき、松任谷先生の頭の中では音楽が分割して出てくるのですか?

松任谷:一括で出てきます。作曲家と作詞家はメロディや歌詞を作り、アレンジャーは、イントロなどを作っています。僕は頭の中で鳴った音を分解し、これは料理人が料理を作るときと一緒だと思います。

司会:それでは、学生たちからかなりの事前質問がありますので、時間が許す限りお答えねがいたいと思います。まずは「松任谷先生は、なぜプレイヤーだけでなくプロデューサーになったのか?」です。

松任谷:プレイヤーは楽しいけど、好きでもない曲をやらされます。だったら自分の好きなことを作れるプロデューサーになった、ということです。

司会:当時プロデューサーは注目されていましたか?

松任谷:小室哲哉さんが出てくる前だから、まだ光を浴びていません。

司会:なのになぜですか?

松任谷:それは、嫌なことをするのが嫌だったから。

司会:他のプロデューサーに対して何か思うことはありますか?

松任谷:出来上がったものにはないけど、制作現場だとたまにあるかな。

司会:続いての学生からの質問は「プロデュースするのに大切なことはなんですか?」です。

松任谷:実際は僕もよくわかっていない(笑)。多分、いちばん大事なのは、クライアント(アーティストなど)としっかりコミュニケーションをとることかな。僕は、彼らからの意見を自分の中で取捨選択していきます。自分はこれがベストだと思っても、別の意見があってそれがよかったらひとつ学べてラッキーだったと思います。

司会:次の質問は、「音楽制作の仕事をするには、学生時代に何をするべきか?」です。

松任谷:今、皆さんが音楽制作現場でやっていることを座学で勉強しても、本当に作ることになったときは全然違います。ですから、今、いちばんやっておいたほうがいいことがあるとすれば、自分の好きな音楽をたくさん聴くことがベスト。今はまだ、プロ的な技術的なことはいらないかもしれない。かつてはセオリーを知らないと組み立てることができなかったけど、今はそうでもないと思います。

司会:技術よりも発想ですか?

松任谷:技術はもちろん知っていたほうがいいけど、本当に大切なのは自由な発想を持つこと。技術ばかりだと、それに縛られてしまうよね。

司会:松任谷さん自身、学生と同じ20歳前後はいかがでしたか?

松任谷:僕らは譜面台を見ることがいちばん大事だった。でも、それは全然クリエイティブなことではない。だから僕はすごい嫌です(笑)。そのときに思ったことをできるようにしておくのが本当は重要で、だったらスタジオの時間をちょっと長めにとるとか……。

司会:そのころに勇気をくれたものはありますか?

松任谷:外国のいい音楽。当時情報もそんなになかったけど、好きなものを聴いているうちに、自分の好きなものが出てきて、その先に作りたいものが現れてきます。マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」(1982年)は、ドラムがレオン・ンドゥグ・チャンクラーだけど、それを聴くまで僕は、スネアのドライな音が好きだったけど、彼は、たとえればゴミ箱のドラムみたいな音で、世の中にはさらに自由な音楽を求めている人がいることを学べました。いい音は既成概念にとらわれず自由です。また、流行が変わっていくのと一緒で、自分の好きなものも変わっていきますね。

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