A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
提携講座/登壇講師インタビューseason 7
CHAPTER.1
プロサッカーチームが地元にあることの価値
ステージに登場した久保田淳さんは、FC東京の2019年の矢印とクラブの象徴的なストライプを組み合わせた、シーズンユニホームをさりげなく学生たちの見える位置に飾り、FC東京への熱い思いから講義はスタートしました。
「僕たちは、スタジアムをいつも満員にしたいと考えています。FC東京は、地域社会・行政・企業の協力体制により『都民のための地域密着型Jリーグクラブ』づくり、また、都民のシンボルとなり、青少年に夢を与え『強く、愛されるチーム』を目指しています。
そのために普段僕は、地域をまわってホームタウン活動を行っています。FC東京が『なくてはならない存在』になるために、さまざまなアクションを起こしています。
現在スタジアムは、平均で3万人の集客がありますが、マーケットを広げるには、いろいろな団体と連携し、地域の広がりをつくりスポーツ(サッカー)で社会問題を解決していくなど、新しいネットワークが必要になってきます。今日は、『FC東京の地域の活動(試合以外)』や、また、『スポーツの価値、スポーツできること』を皆さんにお話ししたいと思います」
冒頭にも述べましたが、2007年度よりスタートした本講座は、これまでコンサートプロモーター、音楽プロデューサー、テレビ、ラジオ、アニメ業界からのゲスト講師を招いており、スポーツの分野からは初めてです。学生たちにはエンタテインメント界でのスポーツの役割を考えるいい機会となりました。
久保田さんは、観客数が増えるとクラブの収入が増えるサイクルを説明しました。
① 観客が増える
② 世のなかから注目される
③ 取材対象としての価値上昇
④ TV登場回数の増加(メディアも注目)
⑤ 広告(スポンサー)価値上昇
⑥ クラブ収入増加
⑦ 新しい取り組みが可能になる
久保田さんは、「FC東京を普及させるとは、広告メディアやスポーツ用品メーカーとの関わりが深いのですが、仕事はそればかりではありません。ホームタウン活動に情熱をそそぎ、地域のつながりを育てているのです」と話しました。
そして、その活動内容について、スタジアムを中心に、練習グラウンドやクラブハウスなどのイラストが描かれたマップをスクリーンに映し出し、サッカーを取り巻く仕事を説明しながら進めていきました。
「我々は、試合を開催するスタジアムの運営だけではなく、アミューズメント施設としての仕事(新商品や新サービス)、練習場での選手育成、選手管理のヘルス・メンタルケアなどの仕事もあります。
グラウンドキーパー、用具係などプロサッカーという華やかに見える世界でも、それを多くの方々が地道に支えています。そして、選手たちの激しいトレーニング、競争、仕事は大変に厳しいものですが、少年たちに努力し続けることの必要性、大切さを感じてもらうために練習グランドで、Jリーグで活躍する選手に直接激励してもらうなど交流をはかっています」
FC東京は、その練習グラウンドで、多摩少年院の院外実習(職場体験)を行ったり、知的障がい児サッカー教室も。さらにまた学習支援を受けている小中学生にも、選手育成のキャリアデザインプログラムを提供したり、さらに味の素スタジアムではFC東京の試合感染の機会も提供。
特筆すべきは、リモートワークに最適化された『分身ロボットOriHime』を利用し、スタジアム近くの病院に心臓の病気に入院している少年が、その兄弟とホームゲームの観戦を遠隔体験するという新しい試みです。スクリーンにはそのときの様子の詳細が語られ、サッカーを通じて、FC東京がこのような社会貢献が行われていることを、学生の多くは初めて知ったことでしょう。
久保田さんが続けます。
「FC東京はホームタウンの少年たちが、誰一人取り残されることがなく、夢や目標、自信をもって活躍できる、そんな街づくりを東京都の皆さんと連携して行っています。困窮家庭の子どもたち、障がいのある子どもたち、少年院にいる子どもたちにもチャンス、チャレンジの機会が必要です。
我々がなぜ、こういったこと(FC東京は『社会を明るくする運動』を調布・狛江地区の推進委員会と連携している)に取り組むのかといいますと、子どもたちにはよい体験をしてもらいたいし、活躍してもらいたいからです。少年の非行は、本人や家庭の問題ということではなく、社会における格差など『社会の問題』にあります。また、少子高齢化、労働力不足という日本の社会問題の解決のために、少年たちの活躍が必要で、みんなが当事者意識を持つべきです。我々はチャレンジすることが大事ということを知ってもらいたいですし、暗いときこそ笑顔を忘れないでほしい」
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