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A.C.P.C.提携講座 ライブ・エンタテインメント論
講義内容一覧 (2013年度 東京工科大学実施)

第1回 オリエンテーション

2013/9/17

中西先生からは、2013年度の講義をスタートするにあたり、ライブ・エンタテインメント業界の“今”と“これから”について話がありました。音楽業界では、東日本大震災以降、アーティスト同士がお互いに力を合わせて復興支援のイベントを開催しているが、これが今の業界を牽引している原動力であり、ひいては日本の活力へつながっているとのこと。また、日本と韓国のライブ・エンタテインメントの比較では、K-POPをはじめとする韓国のエンタテインメント産業の成長は著しいものの、「日本の音楽産業やライブ・エンタテインメント産業は、キャリアの長いアーティストが活躍するなど、新たな価値と存在感を示すことで世界に評価されていることも事実です」と語り、今後さらに発展させるために、国際的な立ち位置をより明確にして、幅広いターゲットに向けたコンテンツの開発と積極的なアピールが必要だと締めくくりました。

講師 中西健夫

社団法人全国コンサートツアー事業者協会 副会長/株式会社ディスクガレージ 代表取締役社長

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中西健夫さん

年間数多くのコンサートを自分の目で確かめ、常に新しい音楽やアーティストの発見にアンテナを広げている反畑誠一氏からは、今期のライブ・エンタテインメント論の開講にあたり、講義の狙いと概要、学習のキーワードについて解説がありました。オリエンテーションの中では、音楽やライブは今まで続いてきた娯楽であり、文化として日本の大切な財産であること、ライブ・エンタテインメントは音楽の作り手とファンとの間をダイレクトに結ぶ大事な役割を担っていること、講義を通じてこの2つを理解してほしいと語りました。また、業界を目指す人には、デジタル技術やインターネット技術、ボーカロイドの登場など新しいエンタテインメントの要素がたくさんある中で、常に新しい視点で音楽ライブの本質を考えていく姿勢を持ち続けるとともに、日本の伝統である歌舞伎や大相撲といったエンタテインメントの原点についても学んでおくべきとのアドバイスがありました。

講師 反畑誠一

ACPC理事/音楽評論家/立命館大学客員教授「音楽文化・産業論」/日本レコード大賞常任実行委員

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反畑誠一さん

第2回 音楽アーティストマネジメント・ビジネス

2013/9/24

ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役会長の原田公一氏によるアーティストマネジメントの仕事と音楽業界の将来についての講義。南佳孝のマネージャーとして活躍した原田氏の実体験を基にしたアーティストマネジメントの業務内容について聴けるとあって、学生たちはメモを取りながら熱心に耳を傾けていました。マネージャーの仕事は、既存のアーティストをマネジメントするだけにとどまらず、新しいアーティストの発掘・育成、売り込むための企画など、その仕事は多岐に渡るとのこと。また、新しいアーティストの発掘は、オーディションやライブハウスでのスカウトに加え、関係者やブレーンとのコミュニケーションなどから得られる情報がきっかけになることも多いことから、「マネージャーをめざすならコミュニケーション能力を鍛えておくべき」と力説されました。最後には音楽業界の未来について、時代の転換期である今をチャンスと捉えていると原田氏。「インターネットの技術革新が続く中、音楽の役割も大きく変化しています。国が推し進めるクールジャパン戦略をさらに加速させ、今こそ海外へのアプローチに最も力を入れていくときでしょう」。そのためにも音楽業界では優秀な人材を求めていると語りました。

講師 原田公一さん

(株)ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役会長

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原田公一さん

第3回 アニメビジネスの最前線の課題

2013/10/8

株式会社アニプレックス代表取締役の夏目公一朗氏が講師を務めました。講義では、日本のアニメーションの市場規模と海外市場拡大の動きなど、他では目にかかれない最新情報が満載。学生たちは真剣な表情で聴き入っていました。夏目氏によると、近年、アニメーション現場では「製作委員会方式」の製作方法が主流とのこと。複数の会社がスポンサーとなるこの方式で、さまざまなリスクは回避できるようになったが、関わる会社が増え、興行収入や利益の分配、製作関係が複雑化していることも事実。そのため「アニメーションや映画のプロデューサーには細やかな調整力やこのような時代を乗り切る忍耐力が求められているのです」と語りました。さらにアニメーション業界の今後については、スマートフォンやタブレットなどのデバイスの普及により視聴が拡大し、加えてアニメイベントのライブビューイングや地域復興における聖地巡礼、アニメツーリズムなど、日本のアニメ産業には、現在も今後も、多くの可能性が秘められており、チャンスを掴める分野との認識を示しました。今国内では、大人向けアニメコンテンツの制作が増加し、幼児向け・子供向けコンテンツの見直しも進んでいます。海外に目を向けるとExpoなどを通して日本のコンテンツやアニメ文化が急速に浸透中で、期待はますます高まるが、海外市場に向けた課題として夏目氏は「正規コンテンツの普及展開、共同配信用のサイト、Expoへの合同出展、アジアでのテレビ放送枠の確保などが必要」と語り、すでに具体的な施策の検討が進んでいるとのことでした。

講師 夏目公一朗さん

(株)アニプレックス代表取締役 執行役員社長

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夏目公一朗さん

第4回 TVの仕事

2013/10/22

記録的な長寿番組テレビ朝日系『ミュージックステーション』を、スタート時から担当するプロデューサーの山本たかお先生が登壇。学生たちは、実際の番組制作のドキュメンタリー映像を食い入るように観ながら、番組制作におけるディレクターの仕事や番組制作の流れ、音楽への情熱や向き合い方など、山本氏が発する言葉一つひとつに聞き入っていました。『ミュージックステーション』一本を作るにあたり、出演者との交渉やリハーサル、撮影準備など、多くの仕事を300人余りのスタッフと連携して進めていくとのことでしたが、その期間はわずか3週間。短時間であのクオリティの高い番組を生み出していることに学生たちは一様に驚いていました。また、生放送にこだわる理由については「出演アーティストのオーラや緊張感が伝わるからなんです」。さらに音楽重視の番組編成でアーティストとの信頼関係を大事にしていることなど、『ミュージックステーション』が視聴者、出演者、そしてスタッフからも愛されている理由が感じられる内容となりました。
プロデューサーとして番組が新鮮さを失わないよう、常に新しい表現方法を模索していると語り、そのヒントは、足繁く通うライブにこそあると山本先生。「インターネットコンテンツがもてはやされる時代だからこそ、テレビ番組の本質的な魅力を追及し、いつまでも視聴者に愛される番組を作り続けたい」。テレビマンとしての熱い思いがヒシヒシと伝わる講義となりました。

講師 山本たかおさん

テレビ朝日「ミュージックステーション」チーフプロデューサー

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山本たかおさん

第5回 弱虫のロック論

2013/10/29

音楽評論家として35年のキャリアを持つ平山雄一氏が講師を務めました。平山氏の音楽評論は徹底したフィールドワークを基本としていて、これまで観たライブは約4800本、インタービューしたアーティストは約2000人に上るそうです。「音楽評論家は、音楽の成り立ちや、制作者のパーソナリティー、社会の動きなどを含めて音楽を観る・聴くことが大切。コンサート会場でファンの反応を体感することが、アーティストの理解を深めることにつながります」。平山氏の評論は、フィールドワークと音楽の歴史を背景としており、もちろん読み手がいてこそ成り立つ仕事であるから、商業的な面も重視しているといいます。
この講義で評論の一例として挙げたのは尾崎豊。社会に対する反抗心を持つシンガーであった彼は、当時の学生など社会的弱者が反抗手段として文化的な活動=音楽にシフトしていったことと重なったため爆発的にブレイク。このことから、成功するアーティストは、何かしらの“社会的な記号”を得ているのだと分析されました。
また、海外公演後に日本と海外のファンによるオフ会が始まっていることに大きな衝撃を受け、音楽を楽しむファンの間では言葉の壁は十分に越えられるものであり、コミュニケーションツールとしてのインターネットに期待が高まると語りました。最後に音楽評論家とは「アーティストとリスナーの情報は対等であるべきだし、その仲立ちをするのが私たちの大切な役割。絶滅危惧種に等しい、業界には欠かすことのできない存在」と締めくくりました。

講師 平山雄一さん

音楽評論家

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平山雄一さん

第6回 笑いとエンタテインメント

2013/11/05

日本の笑いをリードする、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの専務取締役・中井秀範先生が登壇。中井氏は講義の最初に「コンテンツは水、メディアはペットボトルである」と例えました。つまり、水=コンテンツだけでは相手に届けることはできず、常に器となるメディアを介することでコンテンツは相手を楽しませることができる。吉本興業は大阪の劇場で寄席をしていたことから始まったが、創設当時、エンタテインメントの最新メディアであった「劇場」に目を付けたことが発展のきっかけとなったといいます。当時の最新メディアも時代を経るごとに、やがては次のメディアに取って代わられるようになるが、吉本興業は「お笑い」というコンテンツが、時代やメディアの変化に左右されることを当時から予測して、劇場からレコード、ラジオ、インターネットといったメディアの変化と多様化に対応するために、「お笑い」の性質も変化させてきたと語りました。
今後の展開としては、SNSをどのように取り入れていくかでビジネスのチャンスは大きく変わってくると断言。個人向けに発信できるSNSを活用すれば、異なる年齢層やユーザーの多様なニーズに応えていくことが可能であり、芸人にとっても可能性を秘めたメディアであると話されました。

講師 中井秀範さん

(株)よしもとクリエイティブ・エージェンシー 専務取締役 / 一般社団法人日本音楽事業者協会 理事

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中井秀範さん

第7回 SNSサービスと音楽エンタテインメント

2013/11/12

ニコニコ動画を運営するニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏が登壇。ニコニコ動画のサービスを例に、インターネットサービスおよびソーシャルメディアサービスの可能性と将来性について語る講義に、学生はみな真剣に耳を傾けていました。運営者目線からの動画は、視聴される行為がサービスの最終到着点ではなく、動画というコンテンツを介してユーザー同士がコミュニケーションを図る、そのきっかけとなることが最も重要だとし、その場合、コンテンツ提供者とコメントを送信する人はそれぞれがユーザーとして、コンテンツとコメント、コメントとコメントは相互に影響し合うという特徴が生まれる。お互いの存在を確認したり、評価したりすることで自分の存在価値を認識したいという自己認識欲こそがソーシャルメディアの本質であり、ここに新しい事業展開の可能性があると杉本氏は語りました。さらに、インターネットサービスは、テレビなどの従来のメディアサービスとは大きく異なる双方向性の特徴を備えていて、日常会話に近い情報交換と、二次創作などで情報を残し共有していくという機能を活用できる。「一方通行のメディアではその場で消えてしまうような情報やコンテンツも、ユーザーの間に長く残り続けるのがインターネットサービスの世界です」と杉本氏。インターネット上での生放送や動画コンテンツサービスは大きな可能性を秘めているが、著作権やユーザーのモラルなどの問題をクリアすることが大切であり、今後さまざまな角度から取り組んでいかなければならないと指摘しました。

講師 杉本誠司さん

株式会社ニワンゴ 代表取締役社長

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杉本誠司さん

肩書きは講義当時のものです

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